創始者ブログ FOUNDER'S BLOG

相談役 大坪久泰
創始者 大坪 久泰

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2019.01.28

新渡戸稲造(2)

 昨年末に新渡戸稲造の著書「武士道」を取り上げ、年末年始には時間的余裕ができるので、武士道のことをじっくり考えようと思っていましたが、少し寄り道をしてしまい、明治維新の頃の近代史(西郷隆盛や大久保利通のことなど)の本を数冊読むのに時間をとられてしまいました。武士道のケーススタディとして、前に取り上げた西郷隆盛を特にもっとよく知りたいと思ったからです。西郷隆盛のことは最近でも歴史学者が調べていて、色々なことが解ってきているようです。そのことは別に説明します。

 新渡戸稲造著「武士道」は前回も書きましたように原文は英語で書かれていて、私が所有しているのは(1)Inazo Nitobe「Bushido, The Soul of Japan」IBCパブリッシング2015と(3)新渡戸稲造著、奈良本辰也訳「英語と日本語で読む武士道」三笠書房知的生き方文庫です。この他にも英文(原文)の武士道は出版されているようです。(文献の番号が前後していますが)、日本語訳は古くは(2)「武士道」新渡戸稲造著、矢内原忠雄訳ワイド版35岩波文庫があります。文体が古くて難解な語句がでてきますが、名訳と言われています。その他に(4)「武士道」新渡戸稲造著、岬龍一郎訳PHP文庫と(5)「現代語訳武士道」山本博文訳ちくま新書861と文献(2)の奈良本辰也訳(前出)があります。文献(2)は大変面白い本ですが、この本は奈良本氏が原本を圧縮したものです。要点をついているので概念的・抽象的な論述の理解の助けになります。

 さて、新渡戸の「武士道」は17章に分けて述べてありますが、各章の原題とその訳を並べると大変面白く内容が理解しやすくなります。以下に各章の原題と日本語訳を並べてみます。()内の数字は前出の文献の番号です。副題のあるものは付記します。

第1章        Bushido as an Ethical System

(2)道徳体系としての武士道

(3)武士道とは何か

(4)武士道とはなにか

(5)道徳体系としての武士道

第2章  Sources of Bushido

(2)武士道の淵源

(3)武士道の源をさぐる

(4)武士道の源はどこにあるか

(5)武士道の源泉

第3章 Rectitude or Justice

(2)義

(3)「義」―武士道の光り輝く最高の支柱

(4)義―武士道の礎石

(5)義―あるいは正義について 

第4章 Courage, the Spirit of Daring and Bearing

(2)勇・敢為堅忍の精神

(3)「勇」―いかにして肚を錬磨するか

(4)勇―勇気と忍耐

(5)勇気―勇気と忍耐の精神

第5章 Benevolence, the Feeling of Distress

(2)仁・惻隠の心

(3)「仁」-人の上に立つ条件とは何か

(4)仁―慈悲の心

(5)仁―惻隠の心

第6章 Politeness

(2)礼

(3)「礼」-人とともに喜び、人とともに泣けるか

(4)礼―仁・義を型として表す

(5)礼

第7章 Veracity and Sincerity

(2)誠

(3)「誠」-なぜ「武士に二言はない」のか?

(4)誠―武士道に二言がない理由

(5)信と誠

第8章 Honour

(2)名誉

(3)名誉―苦痛と試練に耐えるために

(4)名誉―命以上に大切な価値

(5)名誉

第9章 The Duty of Loyalty

(2)忠義

(3)「忠義」-人はなんのために死ねるか

(4)忠義―武士は何のために生きるか

(5)忠義

第10章 The Education and Training of a Samurai

(2)武士の教育および訓練

(3)武士は何を学び、どう己を磨いたか

(4)武士はどのように教育されたのか

(5)武士の教育

第11章 Self-Control

(2)克己

(3)人に勝ち、己に克つために

(4)克己-自分に克つ

(5)克己

第12章 The Institutions of Suicide and Redress

(2)自殺および復仇の制度

(3)「切腹」―生きる勇気、死ぬ勇気

(4)切腹と敵討ちー命をかけた義の実践

(5)切腹と敵討の制度

第13章 The Sword, the Soul of the Samurai

(2)刀・武士の魂

(3)「刀」-なぜ武士の魂なのか

(4)刀―武士の魂

(5)刀、武士の魂

第14章 The Training and Position of Woman

(2)婦人の教育および地位

(3)武士道が求めた女性の理想像

(4)武家の女性に求められた理想

(5)女性の教育と地位

第15章 The Influence of Bushido

(2)武士道の感化

(3)「大和魂」―いかにして日本人の心となったか

(4)武士道はいかにして「大和魂」となったか

(5)武士道の影響

第16章 Is Bushido Still Alive?

(2)武士道はなお生くるか

(3)武士道は甦るか

(4)武士道はなお生き続けるか

(5)武士道はまだ生きているか

第17章 The Future of Bushido

(2)武士道の将来

(3)武士道の遺産から何を学ぶか

(4)武士道が日本人に遺したもの

(5)武士道の未来

 以上が今回読んだ新渡戸稲造「武士道」の原著の目次と4人の方の日本語訳の目次です。新渡戸はBushidoの著述にあたっては日本語で考えて、それを英語に直したものと思われます。訳者は新渡戸の英語を見て相当する日本語を考えたと思います。従って、ここに標記された目次と副題は夫々の方の理解や考えが表現されているでしょう。同じ内容のことが人によって微妙に違っているのは面白いし、武士道という事柄を理解する上で大変役立ちます。私が理解した各章の内容の要点を述べるより、著者と訳者の書いた目次や副題を並べてみるのが、正確な理解につながると思い、あえてこのように複写してみました。新渡戸の「武士道」の内容が推測できるのではないでしょうか。新渡戸稲造の「武士道」の英語の原文は流麗な文章と言われているそうですが、私には難解で知らない単語が頻出し、理解が困難なところが多々あり、読み終えるのに大変苦労しました。英語力の不足に加えて、引用されている日本の古典や哲学・歴史などの学力不足のためです。つまり、リベラル・アーツの知識不足で、面目ないことです。

 余談ですが、我が宮崎学園の建学の精神の一つ「礼節」が新渡戸の英語でPolitenessと表現されているのには大変興味深く思いました。英和辞典にあるような意味や定義になっている礼儀正しさ、丁寧、上品、洗練という意味にとらえられているようです。私でしたら、Respectとしたいところです。

 もう一つ余談ですが、文献(2)は文体が古いということを知っていましたが、実際に読んでみると口語交じりの文語体で、歯切れがよく気持ちが洗われるような爽快感を味わいました。難しい語句は出てきますが、決して難解ではありません。それに訳者の矢内原忠雄は新渡戸稲造と同じくクリスチャンであることも興味のあるところです。お勧めです。

 次回は私の読後感などを述べてみたいと思っています。