創始者ブログ FOUNDER'S BLOG

2016.12.21

日本語と英語

 言語学者ならずとも識者の常識なのでしょうが、前回書いたように谷崎潤一郎「文章読本抄」に日本語は語彙が少ないことが述べてあり、前々からひょっとしてという思いはあったのですが、現実として大作家に言われるとショックでした。


 


 私の手元にずいぶん前に買ったCrowell社のRoget’s International Thesaurus 3rd editionがあります。この辞書は良く知られおり、よく普及している英語の類語辞典です。アメリカの研究所で働いていた折に、研究者仲間や秘書の人達の机上には英々辞典と必ずと言って良いほど一緒に置いてあるのを見ていました。私は手元に講談社の柴田武、山田進編「類語大辞典」を持っています。この日本語の類語辞典と上述の英語の類語辞典を比較してみます。とは言っても、これらの2冊の辞書は編集法が異なるので、記載されている単語数を比較するのはやや乱暴ですが、それでも語彙数の一応の比較はできるように思います。いくつかの例になるような単語を取り挙げて語彙数を比較してみます。


 


 先ず「美しい」は類語大辞典では類語は約7に対してThesaurusでは「beautiful」として約25。「正義」約15に対して「Justice」で約50。「勇気」約35に対して「courage」は約500といった具合です。こうしてみると、やはり英語は断然語彙が豊富です。日本語の類語辞典は不遜な申しようですが、ほとんど実用にならないのが現状です。Thesaurusの方は私の英語力不足もあるのですが、大変役に立ちます。これは、日本語の類語辞典が悪く、英語の類語辞典が優れているということではなくて、日本語は語彙が少なく、英語は語彙が豊富だということによるものと思います。英語の類語辞典は只読むだけでも面白い読み物だと思います。


 


 次に、情報検索について述べます。現在、情報検索ではウィキペディア百科事典が最も普及しています。良く英語版のWikipediaは情報量が日本語の場合に比べて10倍くらいあると言われています。実際に例を挙げて調べてみると、そのことがよく分かります。


 


「アクティブ・ラーニング」は驚くほどの差ではありませんが、「クリティカル・シンキング」の解説量の差は英語の方が圧倒的に多くなっています。私の研究所時代の理論研究の一つは「ノーマル・モード理論」でしたが、日本語のウィキペディアでは解説は全くありませんが、英語版ではかなり詳しく解説されています。こうしてみると、英語が使えないと情報量不足になることは歴然としています。英語が使えないとdigital divideならぬinformation divideになります。


 


 英語が優れた言語であるというような認識は不当ですが、表現と情報量については英語を使えることが極めて重要であることは明白です。


 


 論が飛躍するようですが、英語のnative speakers に比べて、私達は日本語の情報プラス英語の情報を獲得できると考えて英語力向上の努力を重ねていくべきではないでしょうか。本学の教育は時代の要請に沿った方向に進んでいると思います。