創始者ブログ FOUNDER'S BLOG

2019.08.01

高等教育での語学教育(1)

 「IDE高等教育」という雑誌があります。雑誌というより会報と呼んだ方が適切かもしれません。それはともかく、この雑誌は高等教育(大学や大学院の教育)関係者のいわば業界紙で、小型(A-5版)の月刊誌です。執筆者の大半は大学関係者で、ごく一部に新聞社(日本経済新聞と読売新聞)の方たちの取材ノートという記事があります。そのほかに高等教育関連新刊書の書評があります。読者もおそらく高等教育関係者に限られていると思われます。編集については、IDE大学協会役員が日本の高等教育が直面している種々の課題について、毎号テーマを決めて特集が組まれています。そのNo.611、2019年6月号のテーマは「語学教育再考」です。この特集には本学の山下恵子学長が「宮崎国際大学における英語教育」と題して寄稿しています。
 特集の内容を私の所感を交えて紹介し、現在の日本の高等教育でどのような語学教育が行われているのかを見たいと思います。もちろん、これで日本の高等教育における語学教育の全てをみるということはできないのでしょうが、高等教育全般に深い知識を持っておられるIDE役員が選択された方々の見解ですから、全体像は見えてくるでしょう。
 ページの若い方から順に紹介するのが順当でしょうが、順序を変えて本学国際教養学部の英語教育を紹介された山下恵子学長の寄稿文をまず紹介します。

宮崎国際大学における英語教育(宮崎国際大学学長 山下恵子) 寄

 稿文の要点を若干の修飾と補足を加えながらまとめてみます。

  • 本学国際教養学部では英語で国際的リベラル・アーツ教育を行っている。従って、英語教育は付随的なもので、リベラル・アーツ教育の一環である。(今までに英語がリベラル・アーツ教育の一環であるという表現はあまりしてきませんでした。)
  • 国際的という意味は異文化を理解することが目的ではなく、多文化(または異文化)環境の中で考え行動できる人材を育てるという意味である。
  • 英語でクリティカル・シンキングに基づくアクティブ・ラーニングを行っている。
  • 課題発見及び問題解決能力を身に付けるようにしている。
  • 日英両語による高度なコミュニケーション能力と情報技術活用能力とを身に付けるようにしている。
  • 授業は教科内容を英語で学ぶ所謂Contents-Based English Instruction法(教科並行型、討議型または参加型英語教育と呼ばれている)を採用している。

ということで、英語教育は本学国際教養学部教育の一環です。

  • 学生が英語だけでの授業に慣れていない1年次と2年次前期までの間は、教科専門の教員と英語教員の2名でティーム・ティーチングを行う。
  • アクティブ・ラーニングの授業は学生数20人以下で、4~5人のグループに分けて協働学習を行う(このやり方は仕事をする上で大変役立っていると卒業生が言っています)。
  • 英語力評価にはTOEICを利用している。
  • リメディアル教育として、本学が英語力評価の指標として採用しているTOEICの「対策講座」「ワークショップ」を提供している。
  • 言語科目として必修科目「英語1・2・3」(英文法、プレゼンテーション法)「リーディング1・2・3」「アカデミック・ライティング1・2」がある。クラスは習熟度別にしているが、英語力の高い学生は授業の一部が免除され、代わりに基礎教育科目の授業を受けることができる。
  • 2年次後期に本学と提携している英語圏5ヶ国の15大学において、16週間の海外研修を行う(必修)。研修内容は主として英語研修であるが、高い英語力をもつ学生は提携大学の正規の授業に参加できる。研修先では学生が自主的に決めたテーマで地域研究も行う。この研修で学生の英語聴解力は飛躍的に伸びる。
  • 3・4年次の学習では、まず3年次に進級するためにはTOEICスコアが500点以上であることが要求される。卒業論文は6,500語以上の英語で作成しなければならない。
  • 卒業時の英語力は2017年度卒業生の場合は平均696点であった。語学・文化系大学卒業生の卒業時のTOEIC得点平均より約100点高い。

 以上が本学の英語教育ですが、語学教育の一環として日本語の再教育も全学年で必修科目としています。現在は日本語で考えることに力を注ぎ、テーマを決めてディベートを行ったり、プレゼンテーションを行ったりしています。地域の新聞の読者投稿欄に学生が仲間同士で推敲した文章を投稿して、掲載されることを喜びあっているそうです。
 本文の中で著者は、本学の学生が授業以外で週当たり平均13時間学習していることを述べています。大学生が勉強しなくなったとよく言われますが、筑波大学の金子元久教授が東京大学在職中からの継続的な大規模調査に基づき、日本の大学生の授業以外での勉強時間は週当たり2~3時間であると報告され、問題視されました。現在も大幅に改善されているとは思えません。それに比べて、本学の学生の勉強好きは称賛に価します。実際、私が現職のときにも、保護者が、我が子がこんなに勉強好きとは知らなかったと感謝を込めて話されたのを聞きましたし、教職員からも度々そのような報告を聞きました。
 学生が英語修得に熱心になるための動機付けですが、本学の英語担当の教員は英語学修指導だけではなく、学生に学習意欲をもたせることが基本的任務であるという認識であることも学生が意欲的になる動機付けに大きく貢献しています。誇らしく思います。