学生の声 STUDENT VOICE

「自閉という個性」をもった生徒の社会貢献を目標に。

田上 尚子さん

アメリカ・マサチューセッツ州在住
2008年卒業 宮崎県立宮崎大宮高等学校出身

 宮崎国際大学卒業後の2008年から現在にいたるまで、アメリカ・マサチューセッツにある「ボストン東スクール」に勤務しています。ボストン東スクールは、日本の武蔵野東学園で生み出された 「生活療法」を元に、自閉症を持つ生徒の教育を行っています。日本でもTVドキュメンタリー「青い目のケイティ」を通して 紹介されました。マサチューセッツ州ボストンは、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などたくさんの有名大学があります。つい先日も、自閉症を抱えながらも、社会的成功をおさめたとされるテンプル・グランディン教授の講演会に参加することができました。ボストンは医療関係、教育関係等の幅広い分野の専門家が集まる、とても刺激的な都市です。

  最初は寮職員として採用され、主に寮生の生活指導教育に携わっていました。今年の9月からは学校側で、学級担任の補佐教員として、主に中・高校生の学年を担当しています。他にも卒業生専用のプログラムにも定期的に参加させていただいています。

 ボストン東スクールは「知力」「体力」「感情の安定」を柱に、 自閉という個性をもった生徒の社会貢献を目標としています。 学校の大半の生徒は、重度の認定を受けています。上手くコミュニケーションが出来ないことから、自傷行為をおこなったり、他者を攻撃したり、逃げたりする生徒もいます。そして、それが生徒の「言語」となって表れているのも事実です。そこから生徒が「なぜ」そう行動するのかを常に考える必要があります。それには、地道な努力や、日々の小さな積み重ね、何より生徒と教師の絆が鍵となってきます。同時にスピーチセラピストの協力の元、生徒のコミュニケーション能力の向上、個別指導計画の作成、親権者と教育機間の代表者と行われる生徒の個別の教育プログラム会議に参加することも、職務内容の一つです。このような形で生徒の問題に直面し、共に向き合い、課題を達成する毎日です。時間がかかることが多いですが、生徒が課題を達成する喜び、生徒の笑顔には何事にも変えられません。

 そういった「今」があるのも、宮崎国際大学で学んだ英語力・コミュニケーション力、クリティカルシンキング、教育者としての教養に他ならないと思います。学校ではチームワークは不可欠です。それを可能とする会議や情報伝達は、もちろん英語で行われます。さらに異文化環境・自閉症児の教育に携わる上で、物事を多角的に見る視点や、教職課程で学んだ「障害児教育は教育の原点である」という教育者としての心構えは、日々の教育現場で大いに役立っています。その全てが、いまアメリカで国際人として生きる上での、人生の教養となっています。

 これまでアメリカで過ごした10年を通して、自分が日本人であるという自覚が一層強まったと実感しています。私の職場や置かれている環境には、アメリカ国籍保有者、アメリカ国外からの就労ビザ保有者、私も含めた永住権保有者など、さまざまなバックグラウンドをもった人たちがいます。相手のバックグランド、文化を尊重しながら、共に支え合って仕事をする必要があります。母国日本を離れ、多種多様な価値観が混在する環境で、自分は一日本人としてどう行動するべきか常に自問自答する毎日です。 またアメリカで働けるのは、ひとえに就労ビザや永住権があってのことです。採用から就労ビザ取得、更新、アメリカ永住権の取得、というプロセスを経て初めて可能になるのです。アメリカで働かせていただいている自覚や感謝を忘れてはいけないと強く感じます。その心得を胸に、これからも自分が教育者として、一人の日本人として何を貢献していけるか常に模索し続けていこうと思います。